今日のサプライチェーンマネジメントのテーマは、需要と在庫の関係について。典型的なサプライチェーンはこんな感じです。
1.小売店は消費者の需要を予測してwholesaler(卸売業者)に注文を出す。
2.複数の小売店から注文を受けた卸売業者は独自に需要を見積もったうえでメーカーのdistribution center(集配送センター)に注文を出す。
3.複数の集配送センターから注文を受けたメーカーの工場は独自に需要を見積もった上で製品を製造する。
4.完成した製品は、上記の逆の流れで集配送センター→卸売業者→小売店→消費者まで届けられる。
こうやってサプライチェーンを通じて注文がメーカーの工場に行くわけですが、
問題はサプライチェーンの各段階において在庫の量をどれくらいにするか?ということ。例えば、小売店では過去の販売データ等に基づいて消費者の需要を予測しますが、予想よりも多くの需要があった場合を想定して、卸売業者に対してはある程度の余裕(
safety stock)を持って多めに注文を出します。
これと同じことが卸売業者から集配送センター、工場への注文においてもなされます。つまり、サプライチェーンの上流に行くにしたがって、safety stockの量が増えていく訳です。こうした現象を
Bullwhip Effectと言います。
工場では製造コストを極小化するためになるべく製造を平準化したいインセンティブが働く一方で、このBullwhip Effectの結果、集配送センターから工場にあがってくる注文の量が大きく変動するため、問題になります。同様に、なるべく在庫を減らしたい集配送センターや卸売業者、小売店においてもこれは在庫量の増加→在庫保有コストの増加につながってしまいます。
授業では、この仕組みを数学モデル化し、エクセルでシミュレーションしました。実際に学生に異なる変数を与えた場合のsafety stockの変化について計算・報告させて、皆で結果を共有しながらどうしたらBullwhip Effectを減らすことができるか議論しました。
また、HPがプリンタを生産するケーススタディを通じて、在庫を少なくするためにマーケットに近い集配送センターでローカライゼーションを実施するメリット・デメリットについて、実際にモデルに基づいて在庫量を計算したうえで議論しました。
このクラスは予習・宿題が大変ですが、教授が工夫して学生に参加させ考えさせるスタイルで授業を進めるため、飽きさせません。また単なる理論に終始せず、実際にエクセルでモデル化するスキルも身につくので実践的でもあります。
来週は授業がない代わりに、LA郊外のとある企業の集配信センターに現地集合で実地見学をします。なかなか得られないチャンスなので楽しみです。
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