幾つかの簡単な質問に答えると、その人の将来キャッシュフローをAIがスコア化してくれて個別の融資条件が提示されるという、
みずほの新サービス、Jスコアを試しにやってみました。
■自分のスコアを知る方法
例えば、最初の質問は「服を買うときには何を最も重視しますか?」で、これに対する選択肢は、「デザイン、素材、色・柄、ブランド、価格、製造国」といった具合。こんな感じの質問にサクサク答える都度、時々スコアがぐっと上がります。
名前や住所等の個人が特定できる情報なしで回答できる全ての質問に答えたら、最初のスコアよりも50点くらい高いスコアに見直されました。
■現時点ではサービス提供者のメリットが大
サービスの利用者からすると、簡単な質問に答えるだけで場合によっては有利な条件で融資が受けられるメリットがありますが、僕のように特段の融資ニーズがない人にとっては単にゲーム感覚でスコア推移を眺めるくらいしか現時点ではメリットはありません。
一方で、サービス提供者側からすると、個人は特定できないとは言え、Jスコアはリアルな消費者のプロファイル情報(何歳で、どんな家族構成で、どんな資産構成で、どんな学歴で、どんな趣味で…)を簡単に多数収集できる仕掛けです。
これからの時代は、よりヒット率が高い広告をSNS等のメディアを通じて配信したり、新商品を開発する際の基礎データとして利用したりするために、各企業からするとこうしたプロファイル情報はお金を支払ってでも入手したい情報です。こうした「データ」そのものが価値を持つ時代、他社と差別化するキーになる時代に、ゲーミフィケーションをうまく活用して消費者が自ら進んで貴重なデータを無償で提供してくれる場がJスコアとも言えます。
■これからの展開
中国では一歩進んで、こうしたスコアがより広く日常生活に浸透しつつあります。スコアが高いとホテルのデポジットが不要になる等、種々のサービスで特典が得られたり、時には就職や結婚といった際にもこうしたスコアが判断基準の1つにさえなってきています。裏返すと、スコアが低い人は日々の暮らしで様々な制約を受ける可能性が出てきます。
例えば光熱費を毎月ちゃんと支払うといったことがこのスコア向上につながることが広く知られてきた結果、中国の人々の生活モラルが向上するという、いわば「良い市民」を目指すインセンティブにもなってきています。
日本ではまだJスコアのようなサービスが立ち上がり始めた段階ですが、今後は単なる与信の参考だけではなく、様々なサービス提供を受ける際にこうしたスコアがあると何かしらの優遇が受けられるような使われ方が広がっていくように思います。
しかし、これが行き過ぎると息苦しい管理社会の側面が強くなる恐れが出てきます。サービス提供者も利用者もこうしたリスクを理解しつつ、社会がより健全な方向に進む手段として進化していくよう期待したいところです。