昨晩は朝3時までかけて、General Managementのファイナルレポート用の参考文献(
「志高く 孫正義正伝」井上 篤夫著)を読みました。
アンダーソンでの最後の課題となるこのレポートの内容は、経営者を一人選んでその人の生き様について紹介した上で、その経営者スタイルについて考察・批評するというもの。
となると、重要なのは誰について書くかですが、松下幸之助や本田宗一郎、盛田昭夫ではありがちなので、恐らく今までどの学生も書いたことがないと思われる日本の若手経営者、しかも個人的に興味があるテクノロジー絡みの人を探しました。
思いついたところで、楽天の三木谷、プレステ2の久多良木、マネックスの松本大といった経営者を挙げてみましたが、まだ若すぎて十分な情報が得られませんでした。そこで、狙いをソフトバンクの孫正義に。
彼であれば幾つかの伝記本もありますし、少年時代にまで遡って経営者としての彼のオリジンを辿れるのではないかと。しかも、Rumelt教授と同じUCB卒業生とくれば言うことなしです。
断片的に彼にまつわるエピソードは伝え聞いていましたが、この本を読むと彼はやっぱり常人ではないですね。何が凄いって、そのビジョンの大きさと有言実行力。
坂本竜馬に憧れていた彼は、土佐藩を脱藩した竜馬と自分とを重ね合わせながら、高校1年のときに単身渡米。高校をたった3週間の在籍で飛び級し、大検に合格。
その大検の際には、英語が苦手な自分は不利だと試験官に主張して辞書の使用と時間の延長を認めさせたそうです。3日間に亘って6科目全てに合格する必要があるというこの試験で、周りのアメリカ人が午後3時で試験終了のところを、毎晩深夜12時ごろまでかかって問題を解き終えたとか。
また、UCB在学中に発明したポータブル翻訳機の試作機を作るために、UCBの教授を説き伏せて協力してもらって開発し、それを携えて日本のメーカーを行脚して、唯一興味を抱いてくれたシャープと当時1億円の契約で特許を開示。まだ彼が20歳の頃の話です。
その後は、ソフトウェアの流通、出版に始まり、コムデックスやジフデービスの買収、筆頭株主としてヤフーへの出資、怒涛のブロードバンド事業等、ひたすら走り続けます。
意外と知られていないのは、ソフトバンクが軌道に乗り始めた矢先に肝炎で3年半も入院生活を送り、経営から退いていたこと。こうした不遇をも乗り越えて、今の彼があります。
彼は渡米して間もない頃、「20代で起業、30代で1,000億円の資金を集め、40代で大勝負に出て、50代で成功、60代で経営を次代へバトンタッチ」という人生の目標を立てたそうです。
その目標をいま着実に実現させつつあることが凄いですが、それ以上にこれだけの
大きな目標を19歳にして立て、しかもそれを本気で実現しようと思い込んで努力し続けたことが彼の本当に常人離れしたところだと思います。
ソフトバンクの尽力で日本は今や世界を代表するブロードバンド普及国となりました。渡米前はアメリカの方が進んでいるのかと漠然と思っていましたが、僕の住んでいるLAですら1Mbps程度のADSLかケーブルモデムのために$30ほど支払っているという状況です。
彼は日本テレコムを傘下におさめ、今後は携帯電話に本気で進出するようです。既存のキャリアにとっては大きな脅威である一方、一般ユーザーとしてはより安い料金で高サービスを享受できる訳で大歓迎でしょう。今後も彼には注目しています。株主ですし(笑)。