昨年に引き続き、(社)IT協会の
IT人材活性化研究会にて講演を行いました。タイトルは、「社内SNSの効果と今後の戦略」ということで、開始から3年半が経過した社内SNS(Nexti)の取り組みを振り返りながら、今後の課題と戦略についてご紹介しました。
特に、今回は本番稼動中のNextiに会場からシンクライアント端末経由でリモートアクセスしてデモをお見せできたので、いつもの資料ベースのプレゼンテーションと比べて臨場感があったと思います。
その中で、NextiのキラーコンテンツとなっているQ&Aコーナーのデモをしていたとき、思いがけないハプニングがあって盛り上がりました。実際にどんな感じで全社的なQ&AがNexti上で実現されているのかをお見せしようとして、たまたま1つの質問をクリック。それは、「あるお客様が敷地内にソフトバンクとauのショップがあるけれどドコモショップがないので作りたいとおっしゃっているが、どうしたら実現できるかご存知の方、いますか?」といった内容でした。
質問が面白かったので、聴衆の皆さんからクスクスと笑い声が聞こえました。そして、「例えば、こんな質問があったときに、こんな感じで色々な人が色々な回答をすぐにつけてくれるんです」とか言いながら画面をスクロールすると、最初にあった回答が「ドコモの副社長に問い合わせてみます。」という、社長からのコメントでした。慌てて、「この山下というのは弊社の社長です」と補足すると、会場からどよめきが。
ネタとして仕込んだとしか思えないような展開でしたが、「社長みずからもヘビーユーザーの1人としてNextiを活用しています」と話した内容を実例でフォローでき、結果的に説得力のあるプレゼンになりました。ほかにも、月に1回くらいの頻度で社長が日記を公開して社員がコメントをしている様子や、社員が社長の紹介文を書いている様子などをご紹介。
ベンチャー企業ならまだしも、1万人規模の会社のトップがこんなカジュアルなスタイルで社員と1:1でコミュニケーションを取るなんていうことは、従来の常識では考えられませんでした。こうした日々のちょっとしたコミュニケーションの積み重ねが少しずつ社員の意識や行動を変え、ひいては会社の社風を変え、根付かせていくものだと思います。
今までの企業内におけるコミュニケーションは、広報部やラインを通じた上意下達の一方通行のコミュニケーションが大半でした。これに対して、社内SNSという仕組み上では、社員一人ひとりが情報発信の主体であり、従来の社内コミュニケーションでの立場が主客転倒した新たな情報の流れが生まれます。これは、社員による自由な意思表示を許容した新たなメディア(Employee Generated Media)とも言えます。
一方で経営の視点から見ると、今まではピラミッド構造に即して上から下へ情報統制できていた状況に対して、社内SNSにおける情報はコントロール不可能であることを意味します。したがって、こうしたメディアを社員に与えるということは、経営者はまず社員を信頼すること、そして自分の経営に対して自信があることが必須要件となると考えます。
社内SNSは経営の鏡。だからこそ、社内SNSというのは「導入すれば社内コミュニケーションを活性化できる魔法のツール」では決してなく、この仕組みが社内に根付き、有効に機能するためには、経営トップのコミットメントが不可欠です。「社員全員経営参画」とか、「社員の声に耳を傾ける経営」とかいったスローガンではなく、社長が本気で社員と向き合う覚悟といったものが問われるのです。
今から2年半ほど前のエントリに、「これからは、「社内SNSがどれだけ活用されているか?」という指標でその会社の社風のオープン度や社員の成熟度といったものが見えてくる時代かもしれません。」と書きましたが、もっと言えば今は「社内SNSは経営の健全度を示すリトマス試験紙」だと思っています。
●今は何位かな?