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エコノミスト誌から「マネジメント・コンセプトと企業プラクティスに対して最も影響力のある25人」の1人に選ばれ、The McKinsey Quarterly誌では「戦略の大家」と命名されているRichard P. Rumeltの「良い戦略、悪い戦略」(日本経済新聞出版社)を読みました。 このルメルト、実はUCLA Anderson School of Managementの教授であり、僕がUCLA在学中に彼の"General Management"のクラスを履修しました。UCLAで数えきれないほどの授業を受けましたが、アンダーソンで一番最後に受けた講義となったのがこのルメルトのクラスだったこともあり、印象的な教授の一人です。("General Management"の授業で取ったメモ一覧はこちら) いま新しいマーケットに対して全くの新規プレイヤーとしてどう参入するべきか?という難題と格闘しながら戦略を練っている中、本書で示されている「良い戦略」と「悪い戦略」の様々なケーススタディを通じて改めて良い戦略の要諦を振り返りました。 p.4 (良い戦略に)必要なのは目前の状況に潜む一つか二つの決定的な要素--すなわち、こちらの打ち手の効果が一気に高まるようなポイントをみきわめ、そこに狙いを絞り、手持ちのリソースと行動を集中すること、これに尽きる。 手持ちのリソースは有限であるという当然の制約条件のなかでいかにして他者と差別化するか?がキーだとすると、戦略の重要なポイントの1つはあれもこれもと欲張らずにリソースを集中させること。 昔からある、一見するとレッドオーシャンにしか見えないようなマーケットでさえ、見方を変えればゲームのルールを変えられるような支点を見つけられることもある、という例が幾つか紹介されます。では、どんなポイントから所与のマーケットを見つめなおせば良いのか? p.141 適切な支点を選んでテコをあてがえば、力は何倍にもなる。それは、自然に形成されたか人為的に作られたかを問わず、何らかの不均衡であることが多い。ほんの小さな力をそこに加えるだけで、抑えられていた不満や蓄積されていた力を解放することができる。たとえばニーズは高まっているのに、それに応える製品やサービスが提供されていないとすれば、それは一つの不均衡である。 あるマーケットの中に長くいると、知らずのうちに自分自身で当たり前だと思い込んでいる前提条件が積み重なっていることがあります。案外、外から素人の視点で素朴に観察することで、こうした「業界の暗黙のルール」や「顧客の潜在的な不満」に気づくことができることは多々あります。 また、逆に自分にとっては当たり前のことが、外から見ると非常にユニークな強みだったりすることも。時に第三者の視点を借りて、マーケットを見直すことで「不均衡」を見つけ出し、そこに自社のunuique value propositionをぶつけることで新たな価値を生み出す。そのための仮説づくりと検証の繰り返しこそが戦略思考であり、王道だと思っています。 p.181 戦略を考えるとき、私はいつもこうしたトレードオフに注目する。さまざまなリソースや行動を巧みに組み合わせることで優位性を生む戦略では、「設計力」がモノを言う。あるリソースのセットが与えられているとき、条件が厳しいほどコーディネーションが重要になる。逆に(中略)リソースのクオリティが高いほど、コーディネーションの必要性は少なくなる。 自社の強みを知り、そこに一点集中してリソースを集中させるとき、第二、第三の限られたリソースを並行して別の部分に投下することになりますが、戦略とは複数の打ち手がトータルで連携し合って初めて機能するもの。 重要な気づきに基づく主要な打ち手がまずあり、その価値を最大限に発揮させるための補助的な打ち手にも細心の準備をすることで戦略のストーリーが流れるようにすることが大切です。こうした高い視点から戦略の全体を見通してプロアクティブに必要なコーディネーションをするのがリーダーの役割。 p.353 人間は何かを思いつくと、それを疑いの目で見てあら探しをするのではなく、何とか正当化することにエネルギーを使うようになる。(中略)簡単に言ってしまえば、われわれは自分の考えを厳しい目で検証するという苦痛な作業をなんとか逃れようとする。だから最初の判断が正しいのだと理屈をつける。しかも自分がいやな作業から逃げたことを意識していない。 そして、戦略を考えるうえでもう1つ重要なことは、戦略とは仮説でしかない、という事実。限られた情報と時間でもっともらしい前提条件を置いたうえで導出するストーリーが戦略であり、これは仮説でしかない。実際に行動することでより生の情報や新しいトレンドを知り、時に前提条件を見直したりストーリーを見直したりすることを通じて常に戦略を洗練していくことが重要です。 p.91 戦略を転換し資金や人材やエネルギーや注意をどこか一か所に集中しようとすれば、会社そのものに倒産の危機が迫っているようなときは別として、必ず不利益を被る人が出てくる。したがってこの人たちは、戦略の転換に頑固に反対する。大きな企業の場合、これは避けられない事態と言える。戦略についての話し合いがいくら行われても、どれほど説得されても、この人たちは変化を望まない。そしてリーダーが選択に踏み切れず、新しい戦略を導入することができないと、八方美人型あるいは当たり障りのない戦略もどきでお茶を濁すことになる。 変革には抵抗がつきもの。誰もが納得して賛成してくれるような戦略は往々にして過去の延長線上でしかなくイノベーションとは言えないでしょう。 不確定な要素がたくさんあるなかで、大きな軸を定めて、信念を持ってリードすること。ルメルト教授から学んだ戦略の要諦を踏まえて、大きな組織にいるからこそできる、夢のある大きな戦略を描いて仲間と一緒に可能性を追求していきたいと常々思っています。
by takekurakenya
| 2012-11-10 22:12
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