第4回の
Management Science Models IIで学んだ
Markov process(マルコフ連鎖)はシンプルですがそこから導き出される結果の意外性に感心しました。マルコフ連鎖とは以下のように定義されます。

と言われても、文系出身の僕にはさっぱり理解できません。そこで簡単な例で考えます。
3つの会社A,B,Cがそれぞれ同じマーケットで一定数の顧客を取り合っているとします。ある月の初めに各社が先月に獲得した顧客数と他社に奪われた顧客数、そしてそこから計算される顧客定着率(customer retention rate)は以下の通りでした。

更に顧客がどの会社からどの会社へ移ったかの内訳は次の通りでした。

これらの情報から、以下のような顧客遷移に関する行列(マトリックス)が導き出されます。

例えば、t月にA社の顧客だった人がt+1月にA社の顧客であり続ける確率は80%、B社あるいはC社に奪われる確率は10%ずつということがわかります。
さて、ここである月における3社のマーケットシェアが22%,49%,29%だったとします。もし、各社とも顧客獲得のためのマーケティング活動を先月同様に実施した場合、翌月の各社のシェアはどのように変化するでしょうか?これは、以下のようにt月における3社のシェアに先の顧客遷移に関する行列(マトリックス)を掛け合わせることにより計算できます。同様に、例えばnヶ月後の状態を知りたければ、先の行列をn回かける(n乗する)ことで求めることができます。

ここで興味深いのは、何ヶ月か経過すると(何度か行列をかけていくと)次第に3社のシェアは
ある定常状態(equilibrium conditions)へ近づいていくということです。この特性を利用することで、顧客遷移に関する行列(マトリックス)から次の通り簡単に定常状態を計算できるのです。換言すると、当初の各社のマーケットシェア配分に関わらず、必ず1つの定常状態に行き着くわけです。

この結果を見ると、3社の中で最大の顧客定着率(90%)を誇っていたB社のシェアは最終的には49%から45%まで低下する一方で、最低の顧客定着率(80%)だったA社のシェアは22%から27%に上がることがわかります。このように、直感とは異なる意外な結果が出てくるのがMarkov processの面白いところです。
この理論は、特にマーケティング分野においてブランドスイッチング分析をする際に利用されるほか、アカウンティングにおける売掛金の回収分析、ファイナンスでは株価変動の分析、また生産管理では機械の可用性分析等に広く活用されています。