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たまたま先週、父の書斎の書棚にあったのを見つけて手にした本、筑波大学名誉教授の村上和雄さんの「人生の暗号」(サンマーク出版)を読みました。 村上さんは高血圧の鍵を握る酵素「レニン」の遺伝子を世界で初めて解読したことで知られるバイオテクノロジー分野における世界的な権威で、日本の学術賞としては最も権威があると言われる日本学士院賞を1996年に受賞しています。 本書で村上さんは今までの研究者人生を振り返ったときに、後から考えるに偶然としか思えないような人との出会いや出来事に度々助けられてことで何とかやってこれたと言い、幾つかの運命的なエピソードを紹介しています。 人との出会いは、最初から「ああ、この人とは……」とピンとくるときと、あとになって「あのときが運命的な出会いだったのだな」とわかる場合とがあります。どちらにしても、よい出会いをするためには一つの条件がある。それは「何かを必死に求める」ということです。 人生には、こちらが求めていると、それに関連したことに出会うという何か不思議な暗号めいたものがあります。(中略)しかし、こうした暗号に出会えるときというのはどんな状態でしょうか。 このくだりを読んだとき、すーっと心に入っていきました。思いがけず推薦で大学に入学できたこと、人生の伴侶との出会いとプロポーズ、社費でのMBA留学候補に選抜されたもののGMATの点が伸びず苦しい思いをしていた時に体験した奇跡、社内SNSを立ち上げる時に出会った仲間の顔ぶれの妙…。 人生の節目、節目を振り返るにつけて、確率論では到底説明できないような不思議な出会いや出来事があって今日まで導かれているような気がしてなりません。いわば目に見えない大きな流れに乗っているような。 いずれも何かに夢中になって必死だった時に、思いがけず誰かが横からふっと手を差し伸べてくれることで一気に状況が好転、もしくは前進するような感覚です。 ただし、いずれもその時に自分自身が全身全霊をかけて何事かに集中していて、できる限りの手を尽くしていることが大前提。本当にここぞ!という瞬間に、後で思い返しても「あのタイミングで一体あれ以上の何が望めたんだろう」としか思えないような大きな転機が訪れているように感じます。 …と、そんなことを思いながら通勤電車に揺れれながら本書を読み進めていた昨日、またそんな暗号めいた不思議な出会い、Synchronicityがありました。今はまだ詳細は書けませんが、僕が参加しているあるプロジェクトにおいてどうにもメンバーの気持ちが根っこでひとつになり切れていないような歯がゆさを感じていた折、重要な期日を直前に控えた昨晩に偶然が幾つも重なった末に期せずしてプロジェクトの主要メンバーが顔を合わせる機会に恵まれました。 それまでは忙しくてメール等でしか議論ができておらず、僕の想いも正しく伝わっていなかったのが、ギリギリのタイミングで対面で向き合って議論ができた、そのたった3~4時間の間に事態は急展開。微妙にベクトルがずれていたメンバー間で初めてプロジェクトの基本スタンスがピタッと重なって腹まで落ちた瞬間でした。
例えば昨晩、金曜18時からのお客様との白熱したディスカッションですっかりお疲れモードだった僕がそのまま帰宅していたら、あるいはあのミーティングに誰か一人でも欠けていたら、あるいはプロントのラストオーダーがあと15分遅かったら昨晩の奇跡は起こり得なかった訳であり、だとするときっとこのプロジェクトはどこかで頓挫していたかもしれないと思います。裏返すと、昨晩のミーティングを経て、僕は初めてこのプロジェクトは成功すると直感できました。 村上さんは本書をこう締めくくっています。 科学技術はこれからますます発展していくでしょうが、これまでもふれてきたように精神世界との連携がないと危険なものになる恐れがある。そこで科学者のなかにも、科学と精神世界を結ぶことの必要性を感じて、サムシング・グレートの世界を論じる人が宇宙物理の世界には現れています。(中略) いま、ノーベル賞に最も近い理論物理学者と言われているハーバード大学のリサ・ランドール教授は「わたしたちの暮らす3次元世界は人間の目には見えない5次元世界に組み込まれている」という人類の世界観を覆す概念を発表し話題になっています。 ファクトとロジックの積み上げによるロジカルシンキングはビジネスの世界では必須ですが、一方で最先端の科学ですら我々が暮らすこの世界のほんのごく一端しか説明できていないという事実を謙虚に受け止めるバランス感覚もこれからの時代にはとても重要になってくると感じています。
by takekurakenya
| 2008-09-20 23:21
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